つなぐものは世界、そして―
ジャンル:RPG対応機種:ニンテンドー3DS
発売元:フリュー株式会社
発売日:2017/6/22
あらまし~どんなゲーム?~
この作品の主人公たちは、皆何らかに抗っています。支配種族である魔族に抵抗する組織に属していたり、「魔族とはこうあるべき」という目に見えない鎖に抗っていたり、かと思えば、執事なのに仕えるべきお嬢様に抗っていたり(しかし抗いきれていない)
物語が始まった当初は、彼らはそれぞれの世界でそれぞれに抵抗しているのですが、自分自身の望みに誠実に戦っているうちに、集結し、やがて世界を引き裂く「黒き流れ」に抗うようになります。
流れに抗い続けるというのは大変なことですよね。
どんなに高い山にも頂上はある。
どんなに深い穴にも底はある。
しかし、流れには果てがない。
抗っても抗っても、根本から止めなくてはいつまでも流れ続ける。
流されてしまえば一瞬で楽になれるのに。
その道を選ばすに抗い続けるのには、絶え間なく大きなエネルギーを使います。
この作品の主人公たちは、世界を引き裂く巨大な流れに抵抗しつつも、たくましく、肩肘はらず、やはり己の望みに誠実に戦っていくのです。
この作品自体も流れに抗う強さをもっています。
2017年発売のRPGですが、ダウンロードコンテンツも、ボイスもクエストもない。
じゃあ古臭いのか、というと、私は全くそのようには感じませんでした。
良い意味で懐かしい要素はありますが、それは懐かしさの演出を狙ったというよりも、面白いゲームに必要だから結果的に採用されただけなのでしょう。
操作性もユーザーフレンドリーで、プレイしていてストレスがたまることもありませんでしたし、デフォルメの効いた登場人物たちのグラフィックも、プレイヤーに想像の余地を残すため。
きっと10代以下の人たちがプレイしても楽しいはずです。
そもそも、この作品は、古いから良い、新しいから採用といった、そんなわかりやすい基準でつくられていません。
製作陣が、時代という大きな流れに抗いながら、その流れの力を全て真っ向から受け止めることはせず、柳のようにしなやかに、流れをさばきつつ、それぞれ自分の内なる感覚に向きあい、これは面白いのかダメなのか、果てしない自問自答を繰り返す。
その結果、ダメ出しを受けてつくり直すこともあったりなかったり……。
そんな風につくられたのだと思います。
シンプルかつストイックに、時代にこびない、本質的な面白さを追求しています。
多くの人に楽しんでもらうための努力は最大限にし、ゲームとして高品質を保つ。しかし、多くのプレイヤーに届けるため、評価を高くするため、(こびない範囲でファンサービスはちゃんとありますが)面白さに必要のないものを取り入れる妥協は一切ありません。
純粋に、どこまでも純粋に面白さを追求しています。
純粋であることは、ぱっと見では分かりにくいもの。
もし混ざり物があったとしても、無色であればわかりません。
純粋であるということは、ほんの少しの不純物で変わってしまう可能性を秘めていて、純粋であることを追い求めるのはとてもリスクが高いことでしょう。
しかしリスクを抱えつつも、あえて純粋に面白いものをつくろうとする心意気に、私は心底惚れてしまうのです。
アライアンス・アライブの本物の面白さは、私を心地よく、力強く作品世界に引き込んでくれるのですから。
こまごま~キャラデザ、背景、バトルシステム、サウンド~
このゲームは、雨の降り続く世界の片隅で、静かに始まります。キャラクターデザインはおしゃれで、後ろ姿にまで気が配られていて目を楽しませてくれます。
カバンやポーチの類を身につけているキャラが、主人公9人のうち6人いるというのも生活感があって、何が入っているのかな、と想像力をかきたててくれます。
ただワールドマップを歩き回るだけでも、空気感はもちろんのこと、気温・湿度や風の音・土の匂いまで感じ取れそうな背景が圧倒的な説得力をもって世界観を支えますので、アライアンス・アライブの世界にいる感じを盛り上げてくれます。飛行機も乗らずに外国に行けたような異国情緒を味わえます。
戦闘はバラエティ豊かでダレませんでした。
技も豊富(確認できたのが298個)で、技の名前も格好良いので選ぶたびにテンションが上がります。特に《天落》《武力調停》が好き。あ、《武力調停》のほうは主人公たちの技じゃありません。とある敵の最強の持ち技です。
音楽は、色気がある、と言ったら良いのでしょうか、音と音の間がなめらかに聴こえる、というか、文章にたとえれば行間が読める、というか、……だ、大丈夫ですか? 伝わります?
一部の緊迫感を演出する曲を除いて、聴いていてしっくりくる心地よい曲ばかりです。
レコードを聴いていると混ざることがある、プツ、プツ、といった音のような効果を使う曲があったり、ヴァイオリン属の弦と弓が擦れるときに出る、キュッという、本来の音とは違う高い音が混じるのを残していたり(楽器の鳴らし方として王道ではなく、基本的にノイズ扱いされるものなのかもしれませんが)、ギターのボディを叩く音を使っていたり(スラム奏法と言うらしいですね。今日知りました)、ところどころでアナログ感を演出していて、温かみを感じます。かと思えばクールに「いかにもシンセサイザー!」という音を使っている曲もあり。
足音一つとっても、登場人物によって、更に地面の質感、歩く速度によって違いますので、私は戦闘で強くなるためではなく、足音を聞くためだけにかなり歩きまわりました。もし歩数を数えるシステムがあったとしたら、かなりの歩数になったはずです。世界何周分だろう。
効果音は、聴かせ方が非常に細かく、曲が流れている裏でも、何かしらの効果音が鳴っている場面が多いです。個人的に酒場で食器同士のカチャカチャ当たる音、椅子を引く音がするのが、生活感があって好きです。あと結晶世界の風の音と鳥の声に癒やされます。
世界をつなぐ~ストーリーとキャラとシステムがつながる~
本筋のストーリーは基本的に一本道ですが、選択肢による分岐が本当に細かいのです。寄り道も豊富に用意されていますので、プレイヤーが物語の世界を自由に動き回る感じを味わえます。ギルドのメンバーとして協力してくれる仲間は167人います。
世界観を奥深くする謎が、1周では解ききれないほどたくさんちりばめられていて、2周3周とする楽しみになります。
本筋の部分はポジティブな要素が多いのですが、主人公達に非常に重たい試練が降りかかります。
プレイヤーの選択によって残酷な展開になることも。
寄り道要素では、楽しく問答したり、かと思えばゆがんだキャラや深い闇を抱えたキャラが仲間になったり、プレイヤーに恐怖を与える場所に行けたり。
そのギャップが味わい深く、清濁あわせ持つ世界観を演出してくれます。
ストーリー展開は、王道といえば王道ですが、それだけではありません。
「そこまでやるか……」というとがった要素、「このタイミングでそれ!?」という驚きもあり、
重要な部分で、ストーリーとキャラクターとシステムがリンクした結果、生まれる感動を味あわせてくれます。ゲームでしか味わえない感動です。
戦闘システムもキャラクターを立ててくれます。
イグニッション状態(自分がダメージ受けたり攻撃したり、仲間が気絶するとなる『やる気が高まった状態』)に突入すると、セリフがあります。それが格好良かったり、熱かったり、物騒だったり(ロビンスの場合)、たまに怖かったり(ジーンの場合)、美味しくキャラを味付けています。イグナスのイグニッション突入時のセリフは、理性的な普段とのギャップがまぶしくて、個人的に大好きです。
イグニッション状態に突入すると、ファイナルストライクという、武器を一つ壊す代償に大ダメージを与える技が使えます。ボス戦で、追い詰められた末にコレでとどめを刺すと、めちゃくちゃ盛り上がるのですよ。私の文章で読んでいると「まあそりゃあそうだろうな」という感想しか沸かないでしょうが、実際プレイしてみると予想以上にカタルシスが凄い。私は「良くやってくれた!」と、主人公とがっちり手が振り切れるほどの握手をしたい気持ちになりました。
そして、ピンチのときほどイグニッション状態になりやすいシステムになっています。基本に忠実。
条件を満たすと、同じ戦列にいる仲間と(前列なら前列同士、後列なら後列同士で)リーンフォースという連携が使えるようになるのですが、これを使うとファイナルストライクが更に強くなります。こんなところでも「つなぐゲーム」という姿勢を見せてくれてうれしいかぎりです。
なお、ファイナルストライクで壊れた武器は修理できますので、ご安心を。
ちゃんと話が進むと修理も楽にできるようになります。
テレグラフという、NPCからランダムにメッセージを受け取れるシステムがあるのですが、これがまたキャラを立ててくれて面白い。
熱く真面目に戦闘システムに関する豆知識を教えてくれるキャラがいるかと思えば、夕飯のリクエストをしていたり(しかもメニューが、それ食えるのかよというシロモノ)、モンスターの一家が言語になっていない会話をしていたり。あなたたち、いつの間にか仲良くなったのね、という組み合わせが会話していたり。出番の少ないキャラたちを印象付けてくれます。
まとめ~世界に囚われるRPG~
私はRPGをプレイするときは、主人公と共に歩いていくうちに、ゲームの世界に頭の天辺から足の爪先まで入り込んでいきたい、エンディングを迎える頃には抜け出せないくらいに囚われてしまいたいと願っているクチです。アライアンス・アライブは、そんな私の願いを久しぶりにかなえてくれました。
小さな3DSの小さな電源ボタンを押し、本体を閉じれば、ゲームの世界から抜け出せるはずなのに、それを終えて何日経っても、私は自由で懐の深いアライアンス・アライブ世界に囚われたまま。
一向に抜け出せる気がしません。
きっと、10年20年経っても抜け出せず、一生囚われたままなのでしょう。幸せなことに。
「死ぬまでに、あと1本のゲームしかプレイできないとしたら、何を選ぶ?」と聞かれたら、私はこう答えます。
「アライアンス・アライブです。」と。
プレイ時間:83時間(1周目クリアまで)
※プレイ時間に関して
平均的プレイスタイルで、寄り道をたっぷりしたくらいでは、まず70時間もかからないと思います。
プロデューサー兼ディレクターの松浦氏は、インタビューで下記のように回答していました。
開発チームの人間は、私も含めてエンディングを見るだけで30時間以上はかかっていますね。(中略)ボリュームは元々の想定よりも多くなっていて、乗り物の“方舟”を手に入れると自由度がガンと広がるようになっています。隅々までやり込むならば、40~50時間はかかってしまうと思います。参考までに管理人のプレイスタイル
引用元:『アライアンス・アライブ』松浦P&Dインタビュー。“取り返しのつかない要素”だらけのリハビリゲーム?
・寄り道たっぷり
・バトル早送りは、ほんとんどせず(おそらく全バトル数の1割以下)
・選択肢は、時間のかかるものを選びがち
・地図は購入せず(複雑なダンジョンは無いので、それ程問題にはならない)
・寝落ちなし
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